ドラッカーはマーケティングとイノベーションが経営の両輪であると言っています。
イノベーションは創造的破壊と言われていますが、この言葉につてちょっと考えてみましょう。
ドラッカーは著書「イノベーションと企業家精神」の冒頭において古典的経済学を批判し、イノベーションは経済分野にだけとどまるものではないこと、変化を進んで受け入れなければならないことを強調しています。
私たちは、損得、どれだけ多く得をするかという本能に従って生きています。したがって、経済活動の目的も「いかに儲けるか」ということを疑いもなく信じて行動しています。
ではなぜ損をしたくないのか、ちょっとでも得をしたいのか、人よりも多く得をしたいと考えるのでしょうか?それは不安だからです。「お金がないといい生活ができない」「お金がなくなると不幸になる」「自分の幸せは100%保証されたものではない」
人は不安から逃れるために、安定を求めます。安定を求めるのは本能ですが、安定が目的になると、生き方や経営が保守的になり、受動的になっていきます。そして、いつしか発展が止まり、気が付いたら衰退しているということになります。
ドラッカーはつねに「変化」という言葉を口にしています。変化は不安定なものです。不安定を人間は生理的には好みません。何も意識していないと、肉体の自己保身機能のように、人間は安定を求めます。安定のゴールはどこまで行っても安定です。だから安定が自己目的化すると成長発展が止まってしまい、毎日同じことを繰り返すだけの人生や経営になってしまします。
それでは、毎日のルーティンワークは必要ないのかと反論する人がいるかもしれません。毎日同じように掃除をしているとしましょう。この時、心の持ち方によって全く視点が異なってきます。言われたから仕方なく掃除をするのか、きれいにしてみんなが気持ちよく過ごせたらいいなという気持ちで掃除するのでは、成果は大きく変わってくるものです。
したがって、変化や不安定というのは、心の世界、意識の世界であるということが分かります。他人のために自分の時間を犠牲にして掃除をするということは、楽をしたいという肉体的本能に反すること、つまり変化や不安定な状態になるということです。
長くなってしまいましたが、発展、成長には不安定を積極的に受け入れる姿勢が必要です。そのためには「他のために生きる」「他をよくしたい」という心の姿勢が必要です。ドラッカーのイノベーションの背後にはドラッカーのピューリタリズム的な価値観があります。これは非常に重要なことだと思います。